『<インターネット>の次に来るもの』を読んで考えたこと 

近年のベストセラーで「これからの生きかた」を考えてみました。
書評というより、自分がその本をきっかけにどのような考えを持ったかを書かせていただいています。

<インターネット>の次に来るもの 未来を決める12の法則(2016)

「<インターネット>の次に来るもの 未来を決める12の法則」の著者ケヴィン・ケリーは、テクノロジー界の思想家と呼べる人物です。雑誌「WIRED」を創刊し、99年までの編集長を務めました。

『WIRED』はテクノロジーによって、生活や社会、 カルチャーまでを包括したわたしたち自身の「未来がどうなるのか」についてのメディアです。

こちらは、『WIRED』日本Web版の説明。この本の説明と思ってもいいように思えます。

「<インターネット>の次に来るもの 未来を決める12の法則」という本が良かったよと人に話すと「…で、インターネットの次にはなにがくるの?Al?VR?」と聞かれますが、「インターネットの次はこういう技術が流行りますよ〜」という内容が書かれているわけではありません。

原題は「THE INEVITABLE」。避けられないものという意味です。インターネットに代表されるテクノロジーが広まっていくことで、避けられない変化のことを書いている本です。個別のWebサービスやデバイスがこういう風になるだろうというより、それらを例に用いながらも、もっと根底にある考え方や潮流の話をしています。

その避けられない変化を「12の力」として現在進行形の動詞で表現、章分けしています。

  1. BECOMING(ビカミング なっていく)
  2. COGNIFYING(コグニファイング 認知化していく)
  3. FLOWING(フローイング 流れていく)
  4. SCREENING(スクリーニング 画面で見ていく)
  5. ACCESSING (アクセシング 接続していく)
  6. SHARING (シェアリング 共有していく)
  7. FILTERING (フィルタリング 選別していく)
  8. REMIXING (リミクシング リミックスしていく)
  9. INTERACTING (インタラクティング 相互作用していく)
  10. TRACKING(トラッキング 追跡していく)
  11. QUESTIONING(クエスチョニング 質問していく)
  12. BEGINNING (ビギニング 始まっていく)

これらの12の連続した行動は、今のトレンドであり、お互いが重なり合い、相互依存し、加速しながら、少なくとも30年は続いていくと書いてあります。

私は乗り遅れてるのではないか?

本の内容から少し離れて、1979年生まれの私自身のことを書きたいと思います。私は現在、ホームページを制作したり、ECサイトのディレクションをしたりと俗にいうIT系の仕事をしています。けれど、30歳くらいまでは「そういうのは疎くって……」という人物でした。

神奈川県在住だったので、10代の頃、「全てのコンピューターがつながっている」と、慶応のSFCのキャンパス(神奈川藤沢市にあります)の噂話を聞いて「どういう感じなんだろう」と思ったりしていましたが、インターネット(当時はパソコン通信って言っていた?)は理系のオタクの男子のものって思っていました。

一方、同世代の女性の知人2人は、関東と九州出身ですが、その時代にTLCという女性R&Bグループのファンが集うインターネット掲示板で知り合い、いまだに仲の良い友人だそうです。

TLCと言えば、2002年にメンバーのレフト アイが事故死してしまいました。そのニュースも私はTVや雑誌で知ったような記憶がありますが、彼女たちは掲示板に来ていた音楽雑誌の編集長から、かなり早い段階で第一報を聞いていたそうです。

私もTLCを聞いていました。けれど、インターネットを使うようになってきたのは20歳くらいの頃、それも、自分の部屋にPCがあった訳ではなかったので、メールを送るときに開く程度。インターネットで交流するという発想はまだありませんでした。

「そのとき積極的に使っていたら、私も彼女たちと知り合うのがもっと早かったかもしれない」と感じました。彼女たちが音楽雑誌の編集長と交流できたように、早くからインターネットを使っていたら色んな出会いもあったのかもしれない。「乗り遅れたのでは」と思うときがあります。

「乗り遅れたかも」エピソードはそれ以外も沢山あるのですが、私だけでなく多くの人が「もっと早くに参入してれば良かった」とインターネットの様々な時代の流れに「乗り遅れたかも」と感じていると思います。「今流行りのWebサービス……同じアイディアを考えていたんだよ」とか。

しかし、ケヴィン・ケリーはこう言います。

しかし、しかし……ここで重要なことがある。インターネットに関してはまだ何も始まっていないのだ!インターネットはまだその始まりの始まりに過ぎない。

( 中略 )

2050年の年寄りたちはあなたにこう語りかけるだろう。2016年当時にもしイノベーターで入られたなら、どんなに凄かったか想像できるかね、と。そこは広く開かれたフロンティアだったんだ!どんな分野のものも自由に選んで、ちょっとAI機能を付けて、クラウドに置いておくだけで良かったんだよ!当時の装置(デバイス)のほとんどには、センサーが今のように何百じゃなくて、一つか二つしか入っていなかった。期待値や障壁は低かった。一番になるのは簡単だった。

「<インターネット>の次に来るもの 未来を決める12の法則」 BECOMING p39

 

我々は永遠の初心者である

インターネット以降、技術革新の速度は加速しています。人間の一年の7倍の速度で成長する犬に例えられ、ドッグイヤーと言われていましたが、それだけでは足りないとマウスイヤーと言われるようにもなりました。

そして、PCのOSやWebサービス、ソフトウェアなどは常にアップグレートを繰り返しています。あるソフトウェアを「使いこなせるようになった!」と思っても次の日にはアップグレートのおかげで「ここにあったはずのボタンがない!」と、もう一度学び直す必要が出てくる可能性があります。

年齢や経験と無関係に、永遠の初心者こそが、誰にとっても新たなデフォルトになる。

「<インターネット>の次に来るもの 未来を決める12の法則」 BECOMING p18

我々はいつまでたっても初心者、学び続けなければいけない時代になってしまいました。でも、それは、マイナスなことでしょうか?

三十代までインターネット業界にいなかった私自身のことを振り返ってみます。

二十代前半のときにWebサイトの制作を学び始めた友人が「Flashを学ぶのが大変で……」と話していたことを覚えています。当時FlashはWebサイトの中でアニメーションなどの動きをつける為に必要なカッコいい技術でした。

その10年後、私はWebデザインの職業訓練でFlashを学ぶ機会を持つことができました。しかし、私は、テストで高得点を取る為に授業を真面目には受けましたが、課題のWebサイト制作にはFlashを採用しませんでした。

なぜなら、当時流行り始めたiPhoneがFlash非対応だったからです。「これはいつかはなくなる技術なんだ」と考えました。

その選択で困った経験は、今まで全くありません。自分が制作するサイトにFlashの技術を採用したことは0回です。そしてAdobeはFlashのサポートを2020年には終了することにしました。

これが、今までの社会やインターネットではない別の業界だったら違ったかもしれません。10年前に修行を始めた友人は10年で技術をすっかりマスターして達人になっていたでしょう。そこで、私が「同じ仕事をしたい」と学び始めても勝負にならなかったはずです。しかし、実際は、せっかくマスターした技術も他のものに取って代わられてしまうのがWebの世界です。

私が制作の勉強を始めて数年でも、XHTMLがHTML5に変わったり、レスポンシブWebデザインが主流になったりと、様々な変化がありました。10年間Webサイトを作ってきたけど、レスポンシブWebデザインのWebサイトが作れない人と、Webサイト制作の経験が浅いけど、レスポンシブWebデザインのWebサイトが作れる人がいたとして、どちらに仕事が来るかと言ったら、後者である可能性が高いのです。

定年退職後の仕事を新たに学ぶ

何ができるかが重要なので、他の人が使うことができない技術をマスターした場合は、新規参入でも仕事になります。

常に学び続けなければいけない時代だからこそ、いつ始めても遅いことはありません。その為、「20歳代に修行して、30歳代に独り立ちして、40歳代に弟子をとって……」というような経験をしてこなかったような場合でも、活躍をすることができます。

私がよく一緒にお仕事する四條邦夫さんは、エンジニアとしてメーカーに勤務されていました。そして、定年退職後、Webサイト制作会社を起業しました。当初は、アプリ開発をしてみたいと勉強を始めたのですが、小さな会社を商売相手として考えると、アプリ開発の需要が少なかったため、ホームページの制作を生業にしました。

その後は、アクセス解析を学び、ホームページの制作だけでなくアクセス解析やWeb広告の運用を中心にお仕事をしています。

四條さんと同じように定年退職後、起業を選択する方もいます。しかし、すべてが上手くいくわけではありません。大手企業でビックビジネスを動かしていた方が前職の経験を活かした「コンサルタントを」と思って起業したけれど、全くお客様がつかないこともあります。

もちろん、今までの経験がまったく活きないという訳ではありません。四條さんは、メーカーのエンジニアとしてプロジェクトマネージメントの経験があります。そのため、Webという別の世界でも プロジェクトを計画的に進めることに長けています。私自身も二十代の頃の映像の世界やコールセンターでの経験が今の仕事に活きていると思うときがあります。

四條さんとご一緒していると、若者文化であっても「へえ、知らなかった。面白いね」と持ち前の好奇心を発揮して知ろうとします。また、自分で勉強会を主催するなど、新しい知識を吸収して活かすことも得意です。四條さんは、過去の経験だけでなく、学び続けているから、定年退職後の起業に成功したのです。

学生が社長の先生になる?

私は、現在、オンライン会議ツールのZoomを使いオンラインでWordPressの使い方やホームページ運営を教えています。私がZoomの使い方を学んだのは、大竹啓裕社長が講師をされた勉強会でした。

大竹社長は、「ラーメン花月嵐」を仲間と創業しフランチャイズ化に成功します。その後は、貸会議室事業など別のビジネスを起こし、『ストックビジネスの教科書』というビジネス書も執筆されています。

大竹社長は、Zoomが日本に上陸するかしないかのときから注目していたそうです。「Zoomという凄いツールがある。でも、どうやって使うんだろう…」

探したところ、京都の学生が先生をしてくれることがわかりました。そして、Zoom上でコンサルのようなことをしてもらい、使いながら操作を覚えたそうです。

授業料は高額でしたが、ほかに知識がある人はなかなか見つかりません。大竹社長と同じように全国のZoomについて知りたい多くの人々が同じ学生から教わったそうです。

他の人がまだ知らない情報や知識、唯一無二の技術には価値があります。そこに、年齢や学歴、社会的地位などは関係ありません。学生が有名社長の先生をするなんてこともあるのです。

インターネット上で凄腕のプログラマーがいると話題になり、開発のメンバーにしようと呼んでみたらローティーンだったなんて伝説も聞きます。ローティーンだからと言って、「大学卒業したらまた来てね」なんてことはありません。今はオンラインで仕事をすることもできるので、そのまま、大人と一緒に素晴らしいプロジェクトで活躍することができます。

好奇心と「学び」をやめない人にはいい時代

最近、活躍している多くの人が

「好きなことだけしていろ」

「学び続けろ」

と言います。その人たちはたまたま当たったからそのように言っているようにも見えます。

実際には、たまたまではなく、そうやって生きていれば、つまらない勉強を無理にして有名大学を目指さなくても面白いプロジェクトに参加できたり、定年退職した後も(もちろん、その前でも)新しい仕事にチャレンジできる時代になってきていることに気がついているから言っているのです。

そして、ケヴィン・ケリーの言う通りなら、まだまだインターネットは発展途上(何十年後にはインターネットと呼ばれてすらいないかもしれない)、自分の得意分野とかけ算をして新しいビジネスを生み出すことも、自分の理想的な働き方や生き方を模索することも自由です。

この本を読んで、「乗り遅れたかもしれない……」という不安は解消されました。好奇心と「学び」をやめなければ、出会いやチャンスはまだまだ巡ってくるはずです。

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